【味噌桶の風景】


その部屋の中は所狭しと木で出来た桶ずらりとが並んでいた。
味噌の香りが部屋いっぱいに充満している。

そして、耳を澄ますとそれぞれの桶からはプチッ、ポコッという
小さな音が聞き取れた。


【長助】  さっきの建物の中の水路を堺にして、ここからは味噌の世界なのじゃ 
   
      この店は山一醤油と言う名前じゃが、実は代々味噌も得意としておるのじゃ
      味噌というものは大豆と塩を糀(こうじ)で発酵させるのじゃが、ここはそれが
      最初に寝かされるばしょなのじゃ。

      その木の桶は古いモノでは100年近いものもある、木で出来ておるのじゃから
      当然その木の中には歳を経るとコウジの菌やら、酵母やらが住み着く・・・
      さっきの醤油蔵の「蔵つき様」と同じことじゃなぁ。味噌は生き物じゃからやっぱり
      木が良いのかのぅ。

      小さな音がしとるじゃろ?それは味噌になろうと桶の中で一生懸命息をしとる音じゃ。

      ここで半年、それからもっと奥にある蔵の中の江戸時代から使っておる巨大な
      杉桶に移してやるのじゃ・。そして食えるようになるまで一年以上はかけるかのぉ
      そうして季節ごとの自然な暑さ寒さを経験して味噌は旨くなるのじゃ。

      その奥の大蔵の江戸桶のなかには仕込まれて三十六年間ずぅ〜っと生きておる
      味噌もおるでぉ、
ふぉっふぉ。木の桶でこそ出来る技じゃ!

                                           
ぷちっ、プツッ →進む
←戻る


→色々な入口の広間へ